21世紀ヘルスケアの社会的背景

21世紀の人口動態、医療・介護の環境

I. 2025年頃の状況

超高齢社会が到来

図1-1 高齢化の推移と将来設計
  • 高齢化率が増加、平均寿命が延伸(図1-1)
  • 平均寿命は、2020年時点で女性87.45歳、男性81.41歳と、世界第2位の長寿国
  • 団塊世代が75歳を迎える2025年の高齢化率は30.0%になると推計
    1) 要介護認定率が増加
  • 2018年3月時点で、要介護・要支援認定者数は658万人、全国平均で18.3%(前年度比で2.7%増)
    2) 多疾患罹患、多剤服用(ポリファーマシー)が増加
  • 多疾患罹患が増加
    高齢者は65歳以上の65%、85歳以上の82%が多種類の疾患を持っています。
  • 多剤服用が増加
    a)1人の患者が5種類以上の薬剤を服用している場合、多剤服用の状態にあると言い、その状態では薬剤による有害事象(便秘、転倒、骨折など)が高頻度に起こります。
    b) 処方する医師が1人増えると薬剤による有害事象が約30%増加したという報告もあり、複数の医師が1人の患者の治療にあたると、薬物による有害事象が高頻度に起こる危険性があります。
    3) 認知症患者が増加
  • 認知症高齢者は2012年の調査では462万人(7人に1人)と推計され、2025年に約700万人(5人に1人)に増加すると推計されています。
    4) 在宅看取りの実態
  • わが国のアンケート調査によると、在宅での看取りを希望する人の割合は約55%
  • 実際に在宅で看取りを受けた人は、2016年のデータではわずか13%であり、病院死が約80%を占めています(在宅看取り率は諸外国に比べても極端に低い率)。

少子化が進行

  • 0歳から14歳の人口は、1,605万人(2017年)が1,077万人(2050年)に減少すると推計されています。

II. 2040年頃の状況

多元的な社会の到来

2040年の高齢者人口は3,920万人と最高に達し、高齢化率は36.3%に達します。85歳以上の高齢者は1,000万人を超えると予測されています。そして、人生100年時代を迎えるとも言われています。
2035年には、高齢者に占める一人暮らしの割合が20.2%になると推計されています。50歳までに一度も結婚を経験しない、いわゆる生涯未婚率も2000年に男性で12.6%でしたが、2015年には23.4%に、2040年には約3割に達すると見込まれています。また、高齢期の所得格差は若年層よりも拡大しており、こうした傾向の持続は今後も予想されています。
このように社会が複雑化し、これまでのようにパターン化して考えることが困難な時代、すなわち 多元的な社会を迎えることが予測されています。その予測をまとめると図1-2のようになります。

図1-2 2040年の多元的な社会

III. 医療費・介護費の増加

図1-3 医療費・介護費の見通し

2018年5月の経済財政諮問会議で、2040 年度時点の社会保障給付費が最大で約 190 兆円に達するとの試算結果を公表しました(2018 年度は 121.3 兆円)。
そのうち、医療費は図1-3に示すように、2018年度39.2兆円が2025年には47.4 兆円、2040年には66.7兆円に達すると推計されています。介護費用は2018年度の10.7兆円が2025年で15.3兆円、2040年には25.8兆円になる見通しです。
医療費と介護費の合計額は、2018年が49.9兆円、2040年には92.5兆円と1.84倍にも達することになります。高齢者が増加するために医療費および介護費を共に押し上げることになるのです。
そこで政府は、医療費の増加に対して所得が一定以上ある後期高齢者の負担を 2割に増やす対策を取らざるを得なくなりました。また、介護費の増加に対しては、介護保険料が2000年(第1期)には全国平均で2,911円でしたが、2021年(第8期には6,014円と2.06倍にも達しました。
このまま増加していくと、低所得層の人たちの生活が破綻しかねません。この状態を改善するには医療費および介護費の抑制を図ることが不可避だと考えられます。

IV. 新興ウィルス感染症のパンデミック(世界的流行)

2021 年 1 月から流行し始めた新型コロナウイルス感染症は、その後パンデミックになり、わが国でも 2021 年 8 月時点でデルタ株による第 5 波の感染拡大が起こり、8 月 20 日には全国で 25,992 人の新規感染者が出ました。救急車が入院先を探すのに最大 5 時間近くもかかり、自宅療養者は保健所からの連絡もなく自宅で死亡してしまう事案が発生するようになりました。まさに医療崩壊が起きたのです。
第 6 波はオミクロン株による新規感染者数が全国で最大 10 万人を超えました。
2022 年 7 月中旬から新規感染者が増加して第 7 波の感染拡大が起こり、8 月 19 日には全国で 261,004 人となり世界で最多の新規感染者を出しました。これは感染力の強いオミクロン BA.5 株への置き換わりが進んだためです。病床利用率は 60〜80%、沖縄県では 100%にも達しました。このため、救急車が入院先を探すのに最大 5 時間を要する事案も多数発生しました。重症者はそれほど増えず一日の死者数は 8 月 19 日で 283 人です。
しかし、発熱外来は東京などの大都市ではパンク状態で、発症即日には見てもらえない患者が続出しています。そして、自宅療養者は保健所や医師からのフォローを全く受けることのできない人が多数に上っています。