新型コロナウイルス感染症の時代、超少子高齢・人口減少社会に
適した医療提供体制は如何にあるべきか

超少子高齢・人口減少社会にも耐えうる医療提供体制の確立が不可欠

1. 「 治すこと、救うこと」から「癒すこと、支えること」へ

図2-1 「治すこと、救うこと」から 「 癒すこと、支えること」へ

わが国の 1990 年代の医療は、図 2-1 に示すように 15 歳から 65 歳までの人たちの病気を診断・治療し、「治すこと、救うこと」が中心でした。しかし、その後高齢者が増加し、団塊世代が 75 歳になる 2025 年には高齢化率は 30.0%にも達します。そして、2040 年頃には高齢化率が 36.3%に達すると推計されています(2020 年高齢社会白書 内閣府)。人口過疎地では高齢化率が 50%を超える地域も多数存在することになります。
2040 年から 2050 年頃の人口ピラミッドは逆ピラミッドに近づき、2060 年には 65 歳以上の高齢者が 38.1%に達し、人生 100 年時代に向かおうとしています。2020 年でもその傾向が着実に進行していますので、医療の役割も大きく変わらなければなりません。「治すこと、救うこと」も大切ですが、高齢者は多種類の慢性疾患を抱えて生活していますので、医 療者は「癒すこと、支えること」も心がけなけ ればなりません。そして、最期は患者さんの望むところで「看取る」ことも大切な役割になってきました。

2. 高度急性期・一般急性期病院、回復期・慢性期病院、家庭医療センターの時代へ

図2-2 各国の人口1,000人あたり病床数

わが国は世界一病院数の多い国です。OECD Health Statistics 2019 によると、2017 年時点で人口 1,000 人あたりの病床数を比較すると、日本は 13.0 床、米国 2.9、英国 2.5、イタリア 3.1、フランス 5.9、ドイツ 8.0、と、その数の多さは群を抜いています(図 2-2)。この傾向は 2018 年でも同じであり、日本の病院数は 8,370、米国は 6,210 です。2019 年の人口で比べると、日本は1.262 億人、米国は 3.282 億人であり、米国の方が 2.6 倍も人口が多いことを考えると、わが国の病院数が多すぎることは明白です。そして、その多くが急性期病床です。そこで、厚労省は現状を変えるために超高齢社会にも耐えうる医療供給体制を構築することを目指して、2014 年 6 月に「医療・介護総合確保推進法」によって、「地域 医療構想」を制度化しました。
二次医療圏を基本にして 341 の「構想区域」を設定し、構想地区ごとに高度急性期、一般急性期、回復期、慢性期の 4 つの医療機能ごとの病床の必要量を推計しています。また、地域医療構想を実現するために、構想区域ごとに「地域医療構想調整会議」を設置し、病床の地域偏在、余剰または不足が見込まれる機能を明らかにして地域の実情を共有し、関係者の協議によって構想区域における課題を解決し、2025 年の医療供給体制の構築を目指すことにしています。

図2-3 地域医療構想

地域医療構想の最終的な理想型は、構想区域ごとに図 2-3 に示すような医療提供体制が出来上がることです。400 床以上の大病院が高度急性期病院となり、あるいは近隣の中病院が合併して高度急性期病院になります。その他の中病院(200〜399 床)は、一般急性期病床+回復期病床(+慢性期病床)をもつ病院となり、小病院(20〜199)は、回復期病床+慢性期病床をもつ慢性期病院となる、または、診療所に縮小することもあり得ます。人口減少が顕著な地域ならば廃院せざるを得なくなることもあるでしょう。
これからの時代は、高齢者は多くの慢性疾患を持ちながらも ADL(日常生活動作)は自立して生活していくことが望まれます。したがって、かかりつけのプライマリ・ケア医には高齢者を多くの病気を持ちながら生活している人として包括的に把握して、適切な医学的処方や社会的処方を行って支え、本人の望むところで最期を迎えることができるように支援することが求められます。
その役割を担うのに最適な医師は、地域のジェネラリストである家庭医療専門医です。家庭医療専門医が複数人(理想的には 5 人以上)で多職種とチームを組んで家庭医療を提供する家庭医療センターは、超高齢・人口減少社会には不可欠な存在になってきました。欧米先進諸国では 50 年以上も前からその存在価値が認められていたのです。

3. 21 世紀には新たな地域医療構想が必要な理由

1) 回復期病床が少ないと急性期病床の平均在院日数が長くなり、高齢者は退院時に要介護状態になり易い

図2-4 急性期病床の平均在院日数(国際比較)

わが国の急性期病床における平均在院日数は、図 2-4 に示すように 16.2 日と OECD 37 カ国の中でもずば抜けて長い日数になっています。この原因には種々の要因が考えられますが、その要因の一つとして多数の急性期病床がある一方で、回復期リハビリ病床が非常に少ないこと、および、全科的包括的診療のできる家庭医療センターがほとんどないことが挙げられます。その結果、早く急性期病床から退院して回復期病床でリハビリテーションを受けたり、かかりつけ医である家庭医療センターへ逆紹介されたりすることができ難いのです。
高齢者が入院して 14 日間寝たきりの生活を送ると、筋肉量は約 20%減少することが明らかにされました(オランダ 2015 年)。人間の筋肉量は 20 歳頃が最多で、その後 60 歳まで徐々に低下していきます。60 歳から 70 歳にかけては比較的急激に減少します。そして、あまり運動をしなければ 70 歳時点では 20 歳頃の約 40%まで減少します。30%以下まで減少するとフレイルになったり、要介護状態になったりしますので、在院日数が 14 日間を超えると多くの高齢者がフレイル、あるいは要介護の状態に陥りやすくなるのです。
したがって、わが国では平均在院日数を欧米のように 7~8 日に短縮して退院時にフレイル、あるいは要介護状態にならないようにすることが非常に大切です。そのためにもスムーズに回復期リハビリ病床や地域包括ケア病床に移ることができるように、それらの病床を増やす必要があります。この仕組みが出来上がると、医療費を抑制することができるばかりでなく、健康寿命を延伸させることができ、その分介護費を抑制することができます

2) 多くの患者が高度急性期病院に入院できる体制作りが不可欠な時代が到来

20〜30 年前までは特定機能病院と一般急性期病院があれば事足りていましたが、近年の医学の進歩には目を見張るものがあり、多くの患者がその高度な医療の恩恵を受けられる仕組み作りが喫緊の課題になりました。
手術には低侵襲性の内視鏡手術や腹腔鏡手術が盛んに用いられるようになり、開腹手術を行う必要性は非常に少なくなりました。例えば、手術ロボットであるダヴィンチ支援下の腹腔鏡手術は
① 複雑で細やかな手術手技が可能、②より安全かつ侵襲の少ない手術が可能、③ 手術後の回復が早い、などの特徴を持っています。
心臓手術領域でも、カテーテルを用いて心筋梗塞早期に血栓で詰まった血管を再開通させ、その動脈硬化のある部位にステント(金属製のチューブ)を挿入して血流を保ちます。血管外科領域でも大動脈瘤の開腹手術の代わりにステント内挿術を行います。発作性心房細動などの不整脈発作の病巣部位にカテーテルを当てて温め、不整脈を根治させることも可能です。
抗がん剤療法でも、深い知識と豊富な経験を持つスーパースペシャリストが治療する方が治療成績は格段に良くなる可能性があります。その他脳外科領域、泌尿器科領域、産婦人科領域など多くの領域でより侵襲の少ない治療法が開発されています。 これらの深い知識と高度の技能を要する治療は、多数の専門家がチームを組んで取り組む必要があり、一般的には 400 床以上の高度急性期病院や特定機能病院でしか行うことが困難です。したがって、それらの病院での平均在院日数を 7~8 日に短縮して、より多くの患者さんを入院させる必要があります。そのためにも近隣の中小病院は高度急性期病院からの転院患者さんを早く受け入れるために、回復期リハビリ病床を増床し、また、多数の家庭医療センターを新設することが必要なのです。

3) 高度急性期・一般急性期→回復期→かかりつけ医(家庭医療専門医)のスムーズな移行が不可欠な時代が到来

高度急性期病院や特定機能病院がより多くの患者さんに高度先進医療を提供することができるようにするためには、高度先進的治療が終了すれば回復期病院の回復期病床や地域包括ケア病床に速やかに転院して必要な治療を受け、できる限り早期にかかりつけ医(家庭医療専門医)に戻ることができる仕組みが不可欠となります。高齢者は多疾患に罹患している人が多いので、かかりつけ医としては全科的・包括的医療を専門とする家庭医療専門医が最適であると考えられます。
このような仕組みを作るためにも、中病院も一般急性期病床+回復期病床や地域包括ケア病床をもつ病院に移行し、小病院は回復期病床や慢性期病床をもつ病院に移行することが必要です。人口減少が進んだ過疎地では、すでに 2010 年頃から地域医療構想を先取りして病院再編が進行しています。

4) 臓器別専門医の科別偏在を是正することが不可欠な時代が到来

医療先進国の医療提供体制を見ると、大学病院や高度急性期病院にはすべての臓器別専門医とそのスーパースペシャリスト(超専門医)が揃い、またジェネラリストである病院医療専門医、救急医療専門医、および集中治療専門医が十分な数確保されて高度な医療を提供しています。
しかるに、わが国の現状を見ると消化器内科専門医や循環器内科専門医は非常に多いにものの、膠原病・リウマチ科、アレルギー科、あるいは感染症科は専門医が極度に少なく、ほとんどいない大学病院や高度急性期病院があります。そして、集中治療科や救急医療科の専門医は非常に少ない状況が続いています。このような臓器別専門医の科別偏在が是正できない理由には主として次の3つ要因が考えられます。
1) 臓器別専門医の専攻医枠に上限がないために、専攻医は自分の好みの専門科を選択できること
2) ある一定の臓器別専門科を10年程度研修した後は、自由に開業できるために育った臓器別専門医が次々に開業してしまうこと
3) 大学病院は高度急性期病院のみならず中小病院にも、各臓器別専門医を派遣しなければならないので、膠原病・リウマチ科などの必要な専門医やスーパースペシャリストを育成する余裕がないこと
4) 研修期間の長さと任務の過酷さに応じた給与体系が構築されていないために、過酷な業務に服する臓器別専門医は40〜50歳を過ぎると診療科を変更する傾向にあること
政府は2020年から臓器別専門医の専攻医の募集枠にシーリング(上限枠)制度を導入しましたが、このシーリング制度は大学病院や高度急性期病院に集中しがちな専攻医を地方都市の中規模病院にも志願してもらうための制度です。つまり、地方の中規模病院にも臓器別専門科の専攻医を配置するために設けられたものあり、むしろ地域医療構想を早期に実現を阻害する施策と言えましょう。地域医療構想を実現させるためには、各臓器別専門医の専攻医枠に必要数に応じた上限を設定するべきであり、そして、ジェネラリスト(病院医療専門医(ホスピタリスト)、集中治療専門医、救急医療専門医、および家庭医療専門医)の専攻医枠を大幅に増加させるべきであると考えます。
そんなことをすれば地方の中小病院は医療崩壊を起こすのではないか、と考える向きもあるかもしれませんが、21世紀の超高齢社会は多疾患罹患の時代であり、中小病院に必要な医師は主として病院医療専門医(ホスピタリスト)なのです。そして、中規模病院の救急外来には救急医療専門医が必要なのです。

4. 高度急性期病院や特定機能病院は超高齢社会にどう対応したら良いのか

2020 年時点でも入院患者の大多数は 65 歳以上の高齢者であり、80 歳代、90 歳代の患者が増加しています。その高齢者が多疾患に罹患し、しかも認知症にも罹患している場合は 20 年前とは比較にならないくらいの診断・治療およびケアに手間がかかる時代になりました。高齢者人口が 30%になる 2025 年以降もこの傾向がさらに強くなります。
例えば、うっ血性心不全で入院した 80 歳の患者だと、うっ血性心不全の治療以外に高血圧症、コントロール不十分な糖尿病、慢性腎臓病、脂質異常症、慢性閉塞性肺疾患、脊柱管狭窄症、皮脂欠乏性湿疹など多疾患に罹患している患者さんが多数います。また、外科系の場合はダヴィンチによる腹腔鏡下噴門側胃切除術を施行する 80 歳の患者だと、がん以外にも高血圧症、インスリン治療を要する糖尿病、慢性腎臓病などに罹患していることが多く見受けられます。
このように多疾患に罹患している場合、循環器内科専門医がうっ血性心不全や高血圧症をマネジメントするのは当然としても、インスリン治療が必要な糖尿病、慢性腎臓病、認知症などの併存疾患の管理を行うのはとても大変なことです。また、消化器外科専門医がダヴィンチを操作して腹腔鏡下手術を行うこと以外に、インスリン治療を要する糖尿病や慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、不整脈などの管理を行うことは至難の業といわざるを得ません。したがって、糖尿病専門医、腎臓内科専門医、呼吸器内科専門医、循環器内科専門医に対診(コンサルテーション)しなければなりません。その分入院日数が延びることにも繋がるのです。
急性期病床の平均在院日数が 6.1 日と非常に短い米国では、入院医療の専門医であるホスピタリスト(病院医療専門医--わが国では 2022 年から認定制度が開始される“病院総合診療専門医”が目指している)が内科病棟のほとんどの入院患者さんを受け持ってマネジメントし、深い知識と高度な技能を要する診断や治療に関しては、それぞれの臓器別専門医に相談する仕組みを作りあげています(図 2-5)。ホスピタリストは内科全般についてレベルの高い知識と技能を持っており、集中治療(ICUケア)もできます。

図2-5 ホスピタリストの守備範囲
    その結果、
  • 入院医療の質が向上します
  • 在院日数の短縮もできていることが報告されています
  • 病院医療(hospital medicine)が 1996 年にスタートして以降2008年頃までは、医療費を節減きることが報告されました。
    わが国では、医療面接→身体診察→検査→診断確定のプロセスで、臨床推論の活用法があまり教育されていないので、その知識と技能を持つホスピタリスト(病院医療専門医)が入院医療全体に関わると、最小限の費用で最大の効果を発揮する(cost-effectivene)医療が提供されるようになり、医療費の節減はかなりの額になることが予測されます。米国でホスピタリストの研修を受けた後に日本でホスピリストとして働いている医師は、「費用対効果(cost-effectiveness)の教育をすれば、日本の医療費は随分削減できるでしょう」と明言しています。医療費節減といっても、包括医療費支払い制度(DPC/PDPS)を採用している急性期病院では、費用対効果に配慮する医療を行えば、病院の入院診療収益はむしろ増加することになり、急性期病院の経営は安定化することが考えられます。
  • それまで不足していた体系的な臨床研修を提供できたので、レジデント(研修医)の満足度が高くなり、多くの優秀なレジデントが集まりました。
    ホスピタリストは、医療面接を行って患者さんとの信頼関係を築いて詳細な病歴を聴取し、正確な身体診察法を駆使して身体所見を取り、それらの情報から臨床推論を行い、最小限の検査で正確な診断を確立することに長けています。この医療の基本が身についていないと、鑑別診断のためにやたら多くの検査をすることになり医療費を高騰させてしまいます。米国でも 1960 年代には専門分化が高度になり、体系的に医療の基本を教育できる人がいなくなっていたのです。わが国では現在、以前の米国と同じような状態に陥っており、米国よりさらに深刻になっていると言っても過言ではないと思われます。
    この仕組みを採用すると、ホスピタリストは内科全般についてますます深い知識と技能を獲得することができ、臓器別専門医は自分の領域の深い知識と高度な技能を磨くことができるので、ますます入院医療の質は向上します。また、ホスピタリストは基本的臨床技能の教育にも熱心なので多くのレジデントが集まって来ます。このようなメリットがあるため、2016 年時点で米国の大学病院の 85%、全米大病院の 83%でホスピタリストが活躍しています。
  • ホスピタリストは整形外科や外科の入院患者さんも受け持つようになりました
    整形外科や外科の入院患者さんには高齢患者が多いので、ホスピタリストが受け持つようにその役割が拡大してきています。ホスピタリストが入院患者さんの糖尿病や高血圧症などの全般的なマネジメントを行い、整形外科医や外科医は自分の領域の検査、診断、治療を行う仕組みになっているのです(co-management)。
    わが国は世界でもトップクラスの超高齢社会を迎えているので、もっと多数のホスピタリストを育成して、多疾患罹患の患者をホスピタリストと臓器別専門医が協力しあってマネジメントし、診療の質の向上、在院日数の短縮、および医療費の節減に努めていくのが良いのではないでしょうか。
図2-6 各国の人口 10 万人あたり ICU 病床数
  • ホスピタリストは集中治療(ICU ケア)にも参画することができるので、重症患者病床が増加できました。
    ホスピタリストは内科全般についての研修のみならず、集中治療の研修も積みますので、集中治療病床を増加させることにも貢献しています。コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的流行)でも米国は非常に多くの患者さんが重症化したにもかかわらず、重症病床が逼迫したのは短期間のみでした。体外式膜型人工肺(ECMO)も十分な台数が稼働しています。
    それに比べ、わが国ではコロナウィルス感染症の重傷者は米国に比べるとそれほど多くないのに医療崩壊をきたしました。厚生労働省医政局(2020 年 5 月 16 日)の発表によると、集中治療室の数が米国は人口 10 万人あたり 34.7 床、日本は 4.3 床と非常に少ない病床数です(救急救命入院料を徴収する病床を加えると 9.2 床) (図 2-6)。しかも、米国では専従の集中治療専門医(intensivist)が治療に専念しますが、わが国では専従の医師は非常に少なくて、麻酔科医、救急医、呼吸器内科医などが兼務しているのが実情です。ECMO の台数も十分ではありません。
    わが国の集中治療の現状を考えると、米国のように 集中治療専門医を増加させるとともに、ホスピタリストを多数育成して高度急性期病院の集中治療を充実させることは喫緊の課題であると言えます。

5. 回復期病院から退院したらどうすれば良いのか

回復期リハビリテーションを受けて、あるいは地域包括ケア病棟から退院した後は、多くの場合かかりつけのクリニックに戻るでしょう。罹患している病気の種類が 1、2 種類であれば臓器別専門医のクリニックでその後の継続診療をしてもらっても良いと思われますが、3 種類以上もの病気に罹患している場合は、全科的・包括的に診療することができる医師(ジェネラリスト)に診てもらうのが良いと考えられます。なぜなら、4、5 カ所以上の診療所や病院外来に通院すると重複検査や多剤服用の危険性が増し、薬剤による有害事象(便秘、転倒、骨折、寝たきり)が出現することがあり、また経済的な負担が増すことになるからです(コラム2-1)。
地域のジェネラリストである家庭医療専門医は、全科的・包括的に「治すこと、救うことを」にも精通しており、また、「癒すこと、支えること、そして、看取ること」にも長けています。現時点では、ジェネラリストと呼ぶにふさわしい医師の数はまだまだ充分ではありませんが、日本専門医機構や日本プライマリ・ケア連合学会および日本病院総合診療医学会では、総合診療専門医、家庭医療専門医や病院総合診療専門医を多数育成することに努力しています。
とはいえ、家庭医療専門医や病院総合診療専門医の少ない現状ではどうすれば良いのでしょうか。超高齢社会を迎えたわが国では、多疾患に罹患している人がとても多いので、臓器別専門医の人たちがソロでクリニックを開業する仕組みは、時代のニーズにマッチしていないと言っても過言ではないのではないでしょうか。種々の専門医の人たちが 5、6 人でチームを組んで大規模なクリニックを開業するほうが、より安心・安全な医療を住民の人たちに提供できるのではないでしょうか。例えば、消化器内科専門医、循環器内科専門医、糖尿病・内分泌内科専門医、整形外科専門医、皮膚科専門医、泌尿器科専門医が共通の事務員や検査技師等を雇用して、検査機器も共同利用して大きなクリニックを開業、電子カルテを共通にすれば、多疾患罹患の高齢者でも 1 カ所で全体的に見ることが出来るようになり、患者さんは安心して通院できるようになるでしょう。

<コラム2-1>